ミニカトッポR、H31A オーバーヒートによるシリンダーヘッド吹き抜け
H31A,平成6年 55,000Km
オーバーヒート(Wポンブ冷却水洩れ)に気づかず、無理に走行を続けたためエンジン停止。路上で走行不能に陥った車両でユーザーは女性。水温メーターを見ていなかったようだ。JAFの応援で当社に搬入された時点ではエンジンルームが焼ける臭いがし、クランキングでも明らかに圧縮洩れが認められた。相当なオーバーヒートだがここまで行くとシリンダーヘッド(アルミ合金)が高熱で変形したり、後遺症が出るため、廃車または中古エンジン載せ替えになる場合が多いが、下取りが決まっていたためと検査の残り1年以上あるため自家用で乗ることにし修理することにした。
フロント回りバンパーなど外し、インレツトマニホルドを着けた状態で約1時間半程度の作業でヘッドを脱着できた。ガスケットの破損は無く、シリンダーヘッドの変形による吹き抜けのようだ。ゲージで測定したら歪み限度に近いが面研磨することにしエンジン業者に作業を依頼し0.37mm研磨してもらった。費用を抑えるため最低限の交換パーツで組み付けたがあとでやり直しする破目となった。
タイミングベルト、カム回りを組み付けて先に各気筒の圧縮を計ったが2番、3番が4Kg/平方㎝程度しかなく圧縮が足りない。通常は10Kg/cm以上ないと満足な燃焼は得られないので作業を中断し再度バラスことにした。各シリンダーの内面には傷もなく、オーバーヒートまでは調子よかったのでリング固着による圧縮洩れは考えにくくバルブシート面を疑い16個有るバルブをオーバーホールした。2番、3番の各バルブに当たりが悪くここで圧縮洩れがおきていた。やはり熱による変形でバルブシート面まで影響があったようだ。先にばらした時に軽く点検(灯油などをバルブ上から垂らし洩れの程度を見る)しておけばよかった
再度エンジン業者にバルブシート研磨を依頼し、バルブシールも交換し再度組み付けを行った。ある程度組んだ状態で各気筒の圧縮を測定したら11Kg/平方センチ以上と安定していたのを確認し、配線、ケーブル、などを接合し作業を続けた。LLC注入後エンジンを始動したら一発でかかり、各気筒のバランスも安定して良好な状態になった。タペット隙間を調整し作業を終えた。
SOHC4気筒16バルブでECIマルチ(燃料噴射インジェクション)ターボの一つ下のグレードで軽自動車ながらハイメカを搭載しているタイプ。中古エンジンも少ないので修理を進めたが、かなり手間もかかりあまり良い作業とは言えなかった。